2007年04月22日

経済的苦境

 「いつもと違って今日は腸の調子がいいぞ。お二人にお願いしたお陰かな」巫山は独りごちた。
 自己治療で治した腸閉塞の軽い後遺症が尾を引いているためだった。腸閉塞の直接の原因はバブル期の購入した投資用マンションにあった。その一年後にバブルが崩壊して、物件の共有者でありそれを勧めた従兄弟がある日突然失踪した。勤めていた不動産会社が潰れたのだ。客の苦情もしこたま抱えての失踪だった。携帯電話はプッツリ切れていた。連絡の手立てがない。物件を売ろうとしても共有者のハンコがなければに売ることはできなかった。こうしてローンと残債が巫山の肩にもろにかかってきた。決まって月末に督促が来た。長い長いダークナイトが始まった。恐れが影のようにもいつもぴったりと随伴してきた。そして何年か前に競売が終わった。残債は殆ど減らなかった。
 よくしたもので、インドへ発つ数日前、債権ファインドの者が来訪した。
 「××××××××万円でいいですから来月振り込んでください」
 「弁護士に相談してみますから」残債を抱えての二十一日間コースであった。

 ダサジーアガスティヤル「父親との関係がうまくいかないと経済的苦境に陥ります。母親との場合は精神的苦しみがきます」
 それを聞いたとき、巫山は「何を当たり前のことを言っているんだ。父親との関係性云々は男社会だから金銭に纏わるのは当然のことだろう」と心の中でちっと舌打ちしたものだ。そのうち父親との関係性は単に社会性の問題でないことにようやく気が付いた。
 「アンマ、バガヴァン、今すぐこれこれの経済的苦境を救ってください」もちろんワラディクシヤにも書いた。 

 ある年のインド修養会でのダルシャンである。
 バガヴァン「世界各国から経済的苦境を抱えてにダルシャンに見える経済人の方に、私はいつもこう言っています。
 最悪の事態をイメージしてください。そしてそれを体験してください。そうすれば経済的苦しみはなくなります」
 巫山は早速、街路樹の下に掘っ建て小屋を建てて生活している貧しいインド人の中へ入っていった。何のためらいも違和感もなかった。゛賤民″に身を落としたという感覚もなかった。
 一生懸命家事の手伝いや子供の世話をした。そして着の身着のままでぐっすりと街路樹の下で寝た。寒くはなかった。
 「うん、もう何が来たって大丈夫だ」

posted by 巫山 at 10:02| Comment(0) | TrackBack(0) | 小説ディクシャ
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